【前編】秘密は味と笑顔と少しの心遣い-海南鶏飯BALESTIER 桑名さんの場合-

フードトラックな人たち
【前編】秘密は味と笑顔と少しの心遣い-海南鶏飯BALESTIER 桑名さんの場合-
今回取材したキッチンカーは、海南鶏飯BALESTIER。海南鶏飯。聞きなれない言葉ですが、シンガポールチキンライスのこと。タイのカオマンガイと同じルーツを持つ、茹でた鶏肉とご飯のセット。ソースなど、カオマンガイとはまた違った味が楽しめるのが特徴です。そんなシンガポールチキンライスを提供しているのが、オーナーシェフの桑名二平さん。シンガポール出身で、大学時代までをシンガポールで過ごされています。そんな彼がなぜ日本の地で開業を? なぜキッチンカーを選んだ? その理由とこだわりに迫ると、キッチンカーの未来を覗くことができました。(取材2020年3月)
トントントンと軽快な音を刻みながら目の前でチキンを切ってくれるライブ感、手際よく作業をしながら少しの会話を楽しむフレンドリーな雰囲気。行列に加わる人たちは、美味しいご飯はもちろん、桑名さんとのコミュニケーションも楽しみにしているようです。都会のビルの隙間にあるその小さなスペースには、活気とあたたかい空気が流れていました。

「チキンライスお待たせしました!」と笑顔で接客してくれる桑名さん

たくさんのお客さんに愛される『海南鶏飯BALESTIER』桑名さんの、キッチンカーに込めた思いやこだわりを聞きに、仕込み場にお邪魔しました。

ミシュラン一つ星の名店での経験。

仕込み場で作業中の桑名さんに話を聞いた

19のとき、知り合いからの紹介で初めてレストランで働きました。開店してすぐの小規模なお店で、キッチンの担当は3人くらい。人手が足りないとはいえ、何も知らない若者に、レストランのこと何から何まで任せてもらえたんです。信頼してくれて、ありがたかった。Candlenutというシンガポール郷土料理のお店で、今ではミシュラン一つ星です。3ヶ月という短い間でも、そんな名店で基礎を学べた。楽しい思い出です。

その後、シンガポール国立大学へ入学したあとは、シンガポールの外へ出て、広くアジアでの飲食経験を積みました。香港ナンバー1のホテル、シャングリラホテルの飲食経営部門でインターンをしたり、そのホテルのバーで働いたり、上海でカフェを立ち上げたり。

どうしてこんなに飲食にこだわっているかというと、実は高校生のときに大好きな祖母を亡くしたんです。身近な家族がいなくなる経験。せめて母は身近に感じていたい。それが料理だったんです。小さい頃から手伝っていた料理なら、いつまでも母を感じることができる。それが料理の道を選んだ理由です。

忙しい日本人に、やさしいチキンライスを。

大学を卒業して今度は何をしようかな、という時、こっちで遊んでいたらたまたまキッチンカーに出会いました。
キッチンカーが出店する先って、オフィス街じゃないですか。なかには忙しく、カリカリした人もいると思うんです。でも、そもそもカリカリしてるのって誰も好きじゃないでしょ。毎日80人かもしれないけど、僕の料理でハッピーになってもらえたら、僕も幸せになる。
しかも、毎日出店場所を変えられるのは、経営的にも大きなメリットです。お客さんは毎日同じ店には通わないですよね。1日80人の来店を目標とすると、固定型店舗では400人の常連さんをつくらなければいけません。フードトラックのような移動型店舗なら80人の常連さんがつく場所を5箇所持てばいい。毎日同じ場所にいても、毎日来てくれるわけじゃないので、移動型の方が集客は効率的。毎週何曜日に食べられるってなれば、お客さんの習慣化にもつながります。

「同僚の分と合わせてまとめ買いです」と嬉しそうにできたてのお弁当を見せれくれた常連客の女性

また、キッチンカーってがっつりしたメニューが人気なんです。でも、週1くらいはあっさりしたものが食べたいんじゃないかと思って「あ、チキンライスがぴったりだぞ。チキンライスなら日本人の舌に合ってるんじゃないかな」と考えました。

勢いのよい湯気とおいしそうな匂いに記者の心も高鳴った

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