店舗での経営経験をしたからこそ感じるフードトラックの魅力

フードトラックな人たち
店舗での経営経験をしたからこそ感じるフードトラックの魅力
今回取材したキッチンカーは、とり天丼を提供する”ばく天”さんです。オーナーシェフの西川博和さんは、もともと総菜店で店舗責任者をしていました。固定店舗での経営経験をした西川さんからみたキッチンカーについていろいろお聞きしてきました。(取材2020年6月)

開業前準備

総菜店の会社を辞めてからまず、すでにフードトラックをやっている方のところで働かせてもらい、色々とノウハウを教えてもらいました。料理の経験はありましたが、フードトラックの経験はなかったので。そういう意味ではいい経験をさせてもらいました。一方で調理含め作業以外の車の用意や材料の調達、利益やコストについてなど事業については教えてもらえずでした。出店場所を獲得するまでの流れもわからず、現場に行って営業して断られて終わりという感じでしたので、開業するぞってなった時でも、右も左もわからない状況でした。

メニューの決め手は「かぶらないこと」

最初は唐揚げをやろうと思っていました。前職である総菜店では揚げ物がメインだったので、手作りで美味しく作れるという点で自信があったからです。しかし、フードトラックのことについて調べてみると、唐揚げやカレーが多く、どんなに自信があっても何百台とある中で埋もれそうだなと思い、別のメニューを模索していく中で、とり天だったらいけるのではと思い、決めました。とり天ををやること自体は最初の1週間ほどで決めしたが、味に関しては色々と試行錯誤をして、この味でやろうとなるまでには結局3ヶ月ほどはかかりました。とはいえ、味に関しては今でも日々試行錯誤を重ねています。

ボリューム満点のとり天には自家製の甘辛タレがたっぷり。そのタレが染み込んだお米がさらに食欲をそそります。

「わからないこと」がわからない

メニューだけでなく車選びや最良の手配、仕込み場探し、申請処理の作成など基本的に全て自分で行いました。お問い合わせしたりネットなどで情報を探したり。でもこれが正解という明確なものばかりではないので自分の理解が正しいのか、これで十分と思っているけど足りないものがないのかなど、自分に何が足りてないのか、何をわかっていないのかがわからず苦労しました。その結果、広くていいと思って作った車がサイズが大きく営業できる場所が少なかったり、県をまたがって営業を行う上での書類の書き方、申請方法を理解しておらず、余計な時間とお金がかかってしまうなど、ある程度想定していたとはいえやって初めて知ることも多かったです。

西川さん的常連さんをつけるポイント

前職では管理する立場だったこともあり、対面でお客さまと接する機会がなかなかありませんでした。しかし今は毎日お客さまと接することでどんどん慣れていって、常連さんとも話せるようになりました。個人的にフードトラックを始めて一番成長したポイントは接客力だと思っています。その成長とともに、お客さまのつき方が一変したことを感じています。

元・店舗責任者から見たフードトラックの難しさ

フードトラックが店舗と大きく異なる部分の一つが提供時間に対する考え方です。
固定店舗ではメニューを注文して商品が届くまでに多少時間がかかっても、テーブルで座って待つことができるため、途中でお客さんが帰ってしまうということはありません。
一方でフードトラックの場合、注文を受けてから商品の受け渡しまで遅くとも1分以内、精算を含めても2分以内に行わなければ列ができてしまい、他の店にどんどん流れて行ってしまいます。オフィスで働く人にとってランチタイムの5分は非常に貴重です。このため、毎日その日の仕込みが終わってから、ストップウォッチを片手にどうやったら1秒でも早く提供することができるかと紙に書き出しては何度も練習するを繰り返します。開業から8ヶ月経ちますが、今でもオペレーションの改善は欠かせません。材料や容器の手配なども日々改善で、当初配達をお願いしていた材料も、自分で買いに行った方が安くなる場合もあることを見つけたり、容器も色が違うだけで大きく価格が異なるなど、フードトラックならではの日々の情報収集や改善の意識を持つ必要があると思います。

ランチタイムは休むことなくずっと揚げ続けてます。

夢は店舗を持つことではなく、フードトラックを複数台持つこと

フードトラックの一番の魅力は、一品で勝負できるところだと思います。自分の一番得意な料理を一番得意な形で提供できる。それが固定店舗とフードトラックの違いであり、私がフードトラックを選んだ理由でもあります。将来的には、フードトラックを2台目、3台目と買って、そこで雇用した人たちが1日100食売れるためのシステムを作りたいと考えていますので、固定店舗は今のところ考えていません。