フードトラックで料理を提供することの意味とは?-徳丸食堂さんの場合-

フードトラックな人たち
フードトラックで料理を提供することの意味とは?-徳丸食堂さんの場合-
一般的に肉料理が多いフードトラックの中で、魚料理を提供しているのは徳丸食堂さん。もともと自宅兼店舗で定食屋さんを経営されていたオーナーの伊藤さんが、どういうきっかけでフードトラックを始めることになったのか。そして、始めてわかったフードトラックで料理を提供するとはどういうことか。伊藤さんのお話をまとめてみました。

固定店舗からフードトラックへ

オーナーの伊藤さんはもともと自宅兼店舗として定食屋さんを経営していました。立地としてはオフィス街ということでもなく、多くのお客様がいらっしゃるようなお店ではありませんでしたが、、消費税増税を境に、客足がさらに遠のいていってしまいました。それをきっかけに固定店舗とは別に色々なところで営業できる、フードトラックに魅力を感じ開業を決めました。
メニューとしては魚料理を選んだわけですが、固定店舗を営んでいた時も魚料理は決して人気の高いメニューではありませんでした。それでもあえて魚料理でやっていこうと思ったのはなにより伊藤さん自身が魚料理が好きだったから。好きな料理だから、たとえ売れなくてもがんばれるし、改善もし続けることができると思ったからです。
それと、フードトラックでは肉料理を営む人の割合が多い一方で、魚料理は食べたくても下ごしらえやグリルの後片付けなど、家で調理するにはめんどくさいと感じる方も多く、そういった自分で作るには煩わしいと感じるものが、フードトラックで手軽に味わえるといった消費者の需要があるのではと思ったのも、魚料理にした決め手となりました。

フードトラックで料理を提供するということ

最初は魚を提供しているフードトラックがあんまりいなかったということもあり、物珍しくて購入してもらえていました。しかしそれも長くは続かず、だんだんと客足が遠のいていってしまった時期がありました。
今思うとそれも当然かなと思うのですが、開業初期の頃は、魚のフードトラックをやると言いつつも、魚用の調理器具は積まず、代わりにフードトラックを中古で購入した際に前の所有者がつけてくれていたバーベキュー用のグリルで調理したり、提供スピードが遅いという自覚があったのでそれをカバーするため、あらかじめすべて焼いてきたものを現場では出していました。要するにご飯は温かいけど、肝心の魚は冷めた状態で提供していたのです。

けれど冷めたものであればコンビニやスーパーで売られているお弁当とかわりがありません。固定店舗は目の前で調理をするので出来立てで温かいのは当たり前。そして、フードトラックも”移動型のお店”なのだと思い直し、料理を改善することを決めました。まずは他のフードトラックがどのように提供しているのか観察しました。あるお店では、スチームに魚を入れ提供する時はそこから出して皮だけバーナーで炙っている方がいました。その時は「なるほどな、焼いている暇ないしな」と思いましたが、実際に食べてみるとほんのり温かくはありますが、正直焼き魚という感じはしませんでした。
いろんなフードトラックを見て回りましたが、自分がお客さんの立場になったことを考えると、やっぱり焼き魚は焼きたてじゃないとダメだなと思い立ち、固定店舗でも使っているLPガスグリルでの調理に変更しました。すると、出店初期の頃以上にお客様が並んでくださるようになりました。LPガスグリルを使用したことで、固定店舗とやっている工程が変わらなくなってきてしまったので大変ではありますが、どうせ提供するのであればちゃんとしたいという思いが強く改善しました。

「どうせフードトラックでしょ」を払拭したい

フードトラックは、クオリティ面で固定店舗に比べ「どうせフードトラックでしょ」というイメージを持たれることもあると思います。しかし、クオリティを下げないようにグリルを使ってその場で焼く。そうすれば固定店舗の定食と変わりません。確かに出来合いのものを買ってきて出した方が楽ではありますが、「来週も楽しみにしてますよ〜」というお客様からのお声をいただくと、たとえ副菜であっても出来合いのものなんか出せないですし、それだったらやらない方がマシだと思っています。そうしたこだわりをわかってくれる方は自然とリピーターになってくれます。

何を変えて何を変えないか

フードトラックは日々改善の繰り返しが基本です。開業前にシミレーションができたと思っていても、いざ実際に現場でやってみるとなかなか上手くいかない、それどころか思わぬアクシンデントが発生してしまうということがほとんどです。天気や気温、風の強さに影響される、出店する場所によってお客様の好みが変わる、事故や渋滞に巻き込まれる、車の設備のトラブルなど。フードトラックで営業することは、その時の状況を理解し、いかに臨機応変に対応できるかということが非常に大事になってきます。場所や季節によって売り方、見せ方、調理の仕方、メニューの変更など常に改善し続けていくという姿勢を持ちつつも、最初に始めた時の思い、こだわりも持ち続け、そこは決して変えないという「変化し続けるものと変化してはいけないもの」の両立がフードトラックを続けていくために必要なものかなと思います。